WSET講師鹿児島本格焼酎訪問レポート
2020年1月、WSETのスピリッツコースで教鞭をとる10名の講師が来日しました。目的地は九州、鹿児島。100を超える蔵元と2,000を超える本格焼酎の銘柄を持つ、焼酎王国です。
彼らの目的は、この地で造られている本格焼酎のポテンシャルを見極めること。県内の酒造メーカーの工場で蒸留の現場を視察したほか、奄美まで足を伸ばし、原材料のひとつであるきび畑の視察も行いました。
麹から造る日本ならではの酒、焼酎。欧米文化の中にある蒸留酒とまったく違う背景を持っているその酒に、「滞在中は驚きの連続だった」と、WSETの講師が声を揃えて言いました。
芋、米、麦や黒糖、蕎麦に泡盛など。ひと言に本格焼酎といっても、その原材料は実に多彩。そしてそれらの原材料を贅沢に使い、豊かな風味を愉しむことができる酒であることも、欧米の常識とは異なるようでした。単一カテゴリの酒に幅広い味やフレーバーがあることは、焼酎を飲み慣れた人々にとっては当たり前ですが、講師陣には驚きと喜びをもって迎えられたといいます。
また、どんな原材料を使っていても添加物に頼らず、その風味を味わうことにゆるぎなく軸足を置いていることは、「食中酒として楽しめる世界で唯一の蒸留酒」であることを裏付ける大切な要素です。
料理と焼酎がジャマしあわずに、互いに引き立て合う関係であることは、世界中に焼酎を発信していく際に、大きなポイントであると同時に、幅広い可能性を秘めているといいます。
海外で、日本食人気が高まって久しいですが、酒はまだまだ発展途上であるというのが実情だとか。そんな背景もあり、さっそく「焼酎と料理のペアリングやマッチングについて研究を進めたい」と語る講師もいたといいます。
そして、アルコール度数が高い蒸留酒のカテゴリにおいて、本格焼酎が45度以下と低めなのも特筆すべき点。さらに水やお湯などで割って飲むことで、飲み手が自分の好みの味やアルコール量に合わせて飲むこともできます。
「薄めて飲む」という飲み方も、薄めてしまうと味が損なわれてしまう酒しかない欧米の常識から考えれば、ありえないとか。しかし本格焼酎は、原材料の味覚をそのままに楽しめるため、薄めても美味しくいただけるのです。
未知の存在であった焼酎が、これほどのポテンシャルを持つものであったということに講師陣は驚嘆し、どの様に世界にこの味を伝えていくか、真剣に議論を重ね始めたとか。
「欧米で焼酎にふれたことがある人は、まだ極めてわずかだ。焼酎とは何か、このこだわり抜いた製造工程や、その背景にあるストーリーを知れば誰もが興味を持つはず。受講生の多くにも喜んでもらえると確信している」
本格焼酎の高いクオリティと独自性、他に類を見ないポテンシャル。それは、蒸留酒の常識をくつがえすほどの可能性を秘めているといえるのではないでしょうか。